耳。

いつもいつも耳につっこんでいるiPodを、今日ははずして、奈良公園を歩いてみた。

電車の中ではつけている。近鉄奈良駅の改札を出て、耳から栓を抜く。修学旅行生たちのざわつき、どこへ行こうか、あと何時間自由時間がある、とか、なんとか…。耳慣れない言語が飛び込んでくることもある。中国語だとかろうじてわかったり、英語ではないどこかヨーロッパ語族系の言葉だったり。

いつもなら散策をしていても早足になるところを、今日はつとめてゆっくりと歩を進めてみた。奈良公園に入り、往来を我が物顔で歩く鹿達を眺めて、東大寺への境内とは別の道を進む。

若草山の入山口にて、管理人のおじさんに『初めてですか?』と訊かれ、『20年ぶりです』と答える。ガイドマップをもらって、ゆっくりと登り始める。途中、突然傾斜が急になって心臓が爆裂しそうになったり、山を駆け上がってくる雲がにわか雨を降らせたので仕方なく藪の陰に隠れて濡れながらやり過ごしたり(若草山は芝の山なので登山経路に樹木が無く、まばらに生える灌木や背の高い草に隠れるしかない)。秋の虫の鳴き声が辺りに響き、風の音が聞こえる。

山頂に到達すると、奈良盆地の北部が一望できた。雲がかかっていたので、南の方は見えなかったけれども。

若草山を降りて、二月堂に向かう。二月堂は斜め下から見るたたずまいが好きだ。石段をあがったところのものの配置も好き。入り口の上に、軍鶏の彫り絵が飾ってあった。これも気に入った。

時間が迫ってきたので大仏殿に行く。中の大仏云々というより、俺は大仏殿が好きだ。壮大で、屋根の下の造形とか、すごいと思う。塗りがはげかけているところもたまらなくいい。仏像の良さはわからないけど、建物が好みかどうかはわかるんだよなぁ。

そのあと、采女祭りをみて、帰った。

ミス采女は綺麗だった。もうそりゃミス采女だな、というくらいに。写真をばしばし撮ろうと思ったんだけど、カメラ小僧みたいなのでやめた。ちなみに、まさに文字通りのカメラ小僧が居た。気づくと、ベストボジションに居る。さっきまで行列の後ろを撮っていたはずなのに!